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武蔵大学 2019年度 後期 メディア社会学方法論ゼミ【松谷創一郎】

令和初の渋谷ハロウィーン~変化と今後について~

2018年、渋ハロの悪夢 

 2018年10月28日、ハロウィーンに沸く渋谷の街で一つの事件が起きた。センター街に立ち往生した軽トラックが酔っぱらいにより横転させられたのだ。この事件により、男4人が暴力行為等処罰法違反(集団的器物損壊罪)により逮捕された。

 事態を重く見た渋谷区は、2019年6月に「ハロウィーンやその前の週末、年末年始などに、渋谷駅周辺の路上や公園で飲酒したり、大音量で騒いだりすることを禁じる条例を制定」した*1。また、ハロウィーンの対策に約1億300万円の予算を投じ、厳戒態勢で臨んだ。

 今回この記事を制作するにあたって、軽トラック横転の事件があってもハロウィーンの渋谷には人が集まるのか、また、条例によってどのような変化が渋谷にあったのか気になり調べてみることにした。

ハロウィーン文化の浸透

 元来ハロウィーンとは古代ケルト人の収穫祭が起源である。アメリカ大陸に渡った19世紀以降、仮装した子供が近所の住人からお菓子をもらう祭として定着していった。

 日本では原宿のキデイランド主催のイベントをはじめ、ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンで、秋の風物詩としてハロウィーンは浸透してきた。そんな中、2010年代から渋谷ハロウィーンは徐々にメディアで取り上げられるようになった。

2019年の渋谷ハロウィーンの様子

 私は2019年10月31日、渋谷で現地調査を行った。かつての渋谷ハロウィーンにおける若者は、傷メイクやナース、その時期に流行った特徴のあるキャラクター(主にホラー映画やピエロをモチーフとしたもの)になりきっていた。しかし、今回のハロウィーンでは、オタク文化の系譜のコスプレをしている人が多く見られた。例を挙げれば、マンガの『鬼滅の刃』に登場するキャラクターや『魔法少女まどか☆マギカ』の登場人物になりきったおじさんもいた。さらに、渋谷駅改札からスクランブル交差点にかけて、1人で仮装をしていない男性が仮装をしている女性グループに話しかけている姿が何度も確認できた。

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図1 2019年10月31日16時の渋谷スクランブル交差点

 現地では、多種多様な言語が聞こえてきた。外国人もハロウィーンの渋谷には興味津々の様だ。実際、2018年の軽トラ横転事件の逮捕者の中にはイギリス人、フランス人、ベルギー人も含まれている*2。渋谷駅前で外国人のカメラマンが日本人を取材する姿や、外国の有名人らしき人物のグループが仮装をして10人ほどでロケをしている現場を目撃した。

 私は仮装をしている何組かに街頭インタビューを試みた。最初に、声をかけたのはそれぞれ19歳の同じ専門学校に通っている男性3人組だった。3人は映画『IT』のに登場するピエロ、ペニーワイズをモチーフにした仮想をしていた。その中の1人は栃木から上京したといい、「ハロウィーンの渋谷を味わいたい」との理由で他2人の東京出身者を連れて渋谷に訪れたそうだ。この日は彼らの通う専門学校のイベント帰りだったという。

 もう一組、男性1人で縁石に座っている銀色の全身タイツ姿の男性にも話しかけた。年齢は26歳、社会人で岐阜県から来たサラリーマンだった。なぜ渋谷ハロウィーンに1人で訪れたのか聞いたところ、「ハロウィーンといえば渋谷でしょ」と話した。岐阜にハロウィーンイベントがあったらいいかと聞いたら「岐阜じゃ盛り上がらないでしょー」と笑っていた。

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図2 ハロウィーンに来た19歳の専門学生男性


2019年のハロウィーンは平和に終わった

 2019年11月下旬、私は渋谷区観光協会が運営しているクリエーションスクエアしぶやを訪れ、PRマネージャーの堀恭子さんにインタビューを行った。渋谷区観光協会とは、2012年4月に渋谷区と東京商工会議所が共同で設立した一般財団法人である。主に観光案内所の運営や渋谷区のイベントカレンダーの作成、街の情報をホームページやSNSで発信しているとのことだった。

 渋谷区観光協会はどのように、いつごろから渋谷ハロウィーンに関わっているのだろうか。聞くと15年には地域の人からの苦情が多かったそうで、16年から対策を始めたそうだ。

「15年のときに、今はもうないForever21さんや、センター街の階段に人が座って、お客さんが中に入れないということがありました。西武百貨店さんだとトイレが占領されて、お客さんが利用できなかったり。あと、フルーツパーラー西村さんは、お店を早めに閉めたけどガラスを割られたと聞きました。そういう被害が15年くらいから出てきて、街の人も警戒している感じでした」

 今回、渋谷ハロウィーンが注目されたのは飲酒規制条例が制定されたからだった。しかし、以前観光協会は16年に代々木公園でイベントを開催したことがあったそうだ。

「代々木公園って東京都の持ちものなんですよ。使える時間が20時までと決まっていて、12時から20時は人がそこにいっぱいいたんです。でも、終わったらまたスクランブル交差点に戻ってきました。17年、18年、19年は代々木公園を違うところが借りていて、観光協会としてイベント化したのはこの1回のみです」

 他にも2年ほど前に、新宿区と協力して明治通りでパレードをしようという計画があったという。しかし、新宿側が拒否したため、この話は無くなったそうだ。

 今回のハロウィーンは渋谷区が行政として初めて飲酒規制条例をかけ、約1億円の予算を投入した。渋谷区観光協会もそれに付随して、新たな取り組みを行ったそうだ。

「今回のハロウィーンは啓発活動をしようと思っていて、私たちはホームページと動画作成をしました。フラッグは渋谷区役所が中心で作っていました」

 また、駅前の巨大看板も区役所が制作したとのことだった。看板にも大きく書かれた「SHIBUYA PRIDE SHIBUYA HALLOWEENハロウィーンの渋谷を誇りに~」というキャッチフレーズは、渋谷区の熱い想いから生まれたものだった。

「マナーが悪い人って一部じゃないですか。マナーを守って楽しいハロウィーンにしたいよねってところから、プライドを持って参加してくださいという想いをキャッチフレーズにして、それに賛同してくれた芸能人の方たちがサインしてくれました。観光協会が動画にしたのがこれです」

 そう言うと、堀さんは手元のパソコンで動画を見せてくれた*3

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図3 【MOVIE】SHIBUYA  HALLOWEENYouTubeより引用)

 動画には渋谷ハロウィーンの啓発活動に賛同した14組の著名人が映っていた。ほかにも、公式サイトには啓発活動に賛同する23組の名前も連なっていた*4。また、この啓発動画の制作費は、AbemaTVの藤田晋社長が出したという。

 例年との違いは他にもあり、毎年ハロウィーンの翌日の11月1日の朝に清掃活動をしていたが、区長の「ハロウィンって31日中に終わらせたいよね」という意向から、今年は31日の夜22時から24時まで清掃活動を行ったという。

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図4 ハロウィーングッズをリユースしようという看板


 渋谷区に住んでいる人は、ハロウィーンの渋谷は訪れない。毎年苦情は絶えなかったそうだが、19年は例年とは違う印象があったという。

「今年は成功というか、悪くなかったねという感触があります。条例でお酒飲めなくしたじゃないですか。それもあって、去年や一昨年に比べたらゴミが少なかったんです。また、お酒を飲むと結構喧嘩もあったんですが、今年は平和に終わった感じです」

 ハロウィーン期間の渋谷駅に近寄らない地域の住民でも、ハロウィーンそのものを嫌っているわけではない。「原宿表参道ハローハロウィーンパンプキンパレード」*5のように地域密着型の平和なイベントに参加しているとも話していた。

客足を他の街に分散させる

 飲酒規制で例年より落ち着いたとはいうものの、他にも問題はあるようだ。

「今年は、スピーカーを乗せて騒いでいる車が多かったねって感想がありました。来ている人たちは良かったんですけど、車で来ている人たちがすごくうるさかった」

 そう言うと堀さんは苦悩の表情を浮かべた。スクランブル交差点は完全閉鎖し、車は通ることはできなかったが、スピーカーを乗せ、大音量で音楽を流す車や暴走車は、規制されていない道路で騒ぐのだ。これらの車は毎年来ていたが、今年は特にひどかったそうだ。

 ハロウィーンの渋谷には外国人の姿も多く、TVのロケのようなことを行っている姿も見られた。実感として堀さんも増えていると感じていた。

「オリンピック・パラリンピックまではどんどん増えると観光庁も言っていましたが、本当に増えていると思いました。また、ラグビーのワールドカップとも同じ時期でした。それで余計に多かったというのもあると思います」

 また、現地調査の際にガイドツアーをしている中国人の姿も見られたが、ハロウィーンのような危険と思われる日には、観光協会主催のガイドツアーは行わないとのことだった。

 インタビューの最後に、今後のハロウィーンのあり方について聞いた。20年の対策について、インタビューをした当時(19年11月下旬)では反省会は行っておらず、まだ明確にはわからないそうだ。しかし、19年の対策がうまくいったこともあり、20年にも続けるのではないか、と堀さんは個人的な意見を述べた。観光協会としても啓発活動は行っていく予定だそうだ。

「マナー啓発の動画は来年も使おうってなっていて、フラッグも捨てずにとってあります。多分また来年も使うから。そういったものをまたやりたいとは思っています。マナー啓発くらいしかできないですけどね」

 動画もフラッグも20年のハロウィーンに使うようだった。マナー啓発しかできないのは、イベントを積極的に行うと区民から人を集めないようにと苦情が来るからだそうだ。

 今後、渋谷はどのようなハロウィーンになるのだろうか。堀さんの話では、渋谷区観光協会金山淳吾代表理事大きな展望を持っているようだった。

「川崎や池袋は、街として呼び込むじゃないですか。ハロウィーンを機に街に来てもらうイベント化をしているから、東京都と協力してハロウィーンをみんなで考えて分散させたいねという話はしてます」

 神奈川県川崎市では、「カワサキハロウィン」として1997年から毎年イベントを開催している。2019年10月27日にはJR川崎駅東口周辺で約1.5キロメートルにわたりパレードを行った*6。また、池袋では毎年2万人以上が参加するコスプレイベントを行っている*7。渋谷以外の都市でもハロウィーンイベントは行っている。そのようなところと協力し客足を分散させれば、騒動は収まるのではないかとのことだった。

 最後には、カウントダウンのようにイベント化しても良いのではないかと語った。

「ゆくゆくはちゃんとイベント化した方がコントロールが効くじゃないですか。今って野放しだから。イベント化した方が、何時から何時まででこうですよ、終わったから帰ってくださいと、やりやすいと思うんですけど……」

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図5 渋谷区観光協会の堀さんとのインタビューの様子

 

葛藤の末の酒類販売自粛

 ハロウィーンの余韻もなくなり、世間はクリスマスの準備を始めようとしている12月上旬。私は渋谷区役所を訪れ、広報コミュニケーション課長の杉山省吾さんに話を伺うことができた。

 杉山さんは2015年から渋谷区に務め、同年の4月に長谷部健区長が就任したことで、区役所が初めて正式にハロウィーン対策を行ったと話した。

 はじめに杉山さんにはハロウィーンにおいてどのような問題があるのか聞いた。やはりハロウィーンの問題として挙げられるのはゴミと犯罪がほとんどで、それに準ずる形で経済が活発化しない問題があると硬い表情で語った。苦情について聞くと、センター街に多くあるチェーン店はむしろ儲かっているという意外な答が返ってきた。

「センター街に多くあるチェーン店や全国資本のナショナルブランドはクレームを寄せてはいないです。むしろそこは儲かっている方だと思います。しかし、近年はナショナルブランドの店舗も18時に閉めるなど、職員やバイトが危ないから早閉めするところがありました。センター街に関して言うと往来の人が多すぎて店に入れないから、結局店を開けても人が入ってこない状態が去年まではあったんです。今年はご存知の通り、路上飲酒規制条例をだして警備を強くしたことで、今年はちょっと違って店に入った人が多かったと気がします。条例の成果ですよ。外で飲めないから中に入る」

 店で飲めることについて杉山さんは、飲酒自体を禁止することの難しさを語った。販売自粛要請も苦渋の決断で、コンビニや酒屋の協力がなければ成り立たなかった。

「例えば渋谷の治安が悪いとか、去年の軽トラ事件が当たり前になったら、皆さんの商売にも長い目で見たら悪い影響がでますよね、そうならないために協力してくださいね──っていうお願いのロジックでした」

 「禁止にしろ」という声は、飲酒だけにとどまらず、仮装自体にも及んでいるとのことだった。しかしそれも、憲法上の理由から難しいとのことだった。

「渋谷って個性的なファッションの人が多いじゃないですか。どこからどこまで仮装で、どこからがファッションかが線を引けないわけです。仮装だから逮捕や罰金はできません。ファッションは個性とか表現なので、それを役所が線引いて罰則かけるというのは、この日本ではあってはいけないです」

 弁護士の澤井康夫は「仮装する自由や飲酒する自由は、憲法13条の幸福追求権や自己決定権の下、一定程度保障された権利です。これらの権利を規制する法律そのものがない以上、条例で無制限にこれらの権利を規制することはできません」と述べている*8憲法13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする」とある。個人の自由を重視する日本では、むやみに飲酒や仮装を禁止することはできない。 

 今回注目されたことの一つに、約1億円の税金投入があった。この予算は、周辺の安心・安全の確保という名目で用意したものだった。内訳としては、約9000万円は民間の警備会社に委託し、残りの1000万円はゴミ対策と啓発の広告のために500万円ずつ使われていた。

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図6 渋谷駅前の櫓には渋谷周辺のマップと啓発広告があった

 ここまでは渋谷区が用意した予算について述べたが、杉山さんの話によると都民からの税金が渋谷ハロウィーンに多く投入されていることが分かった。

「今回渋谷区が1億円の条例をかけたことに、渋谷の騒動と関係ない笹塚や広尾に住んでいる方が不満に思う気持ちはすごくわかります。しかし、都のお金もあそこに投入されているんです。足掛け8日間、ハロウィーンの日は夜通し警官が投入されています。警視庁の人は東京都の公務員だから、都民が払っている都税が騒動のたびに使われているわけです。その点で渋谷区民だけが1億円に怒るんじゃなくて、本当は都民も怒ったほうがいい」

 警察官の動員数は正確に公表しておらず、杉山さんもどのくらい投入されたのかは知らないそうだ。ハロウィーンの問題は渋谷区だけでなく、東京都全体で考えていく必要がある。

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図7 渋谷駅前の警察官の様子

 

代々木公園でイベントは難しい

 16年に代々木公園で観光協会主催のイベントが行われたことは、先の堀さんの話でも出た。そのことについて、杉山さんにも今後イベント化することはないのか聞いてみた。

「代々木公園でイベントやったところで、騒乱を抑える上ではなんの役にも立たない。たしかに、安心安全で楽しいコンテンツを提供して、来街者の方に楽しんでいただく場にはなると思います。でも、曜日配列によっては1週間、今年なんかは足掛け8日間あったわけですから、1週間も代々木公園を貸し切ってイベントやるのも大変です」

 他にも、代々木公園の裏には高級住宅街があり、その住民感情を考えるとイベント化に踏み切ることができないそうだ。

「実は代々木公園の活用について、拡大利用をアプローチしているんですけど、そもそも代々木公園には閉園時間があるわけです。たしかにオールナイトで開ければ、多少吸収できる可能性はあります。でも、恐らく無理でしょう。行政が主催する、管理された健全なハロウィーンイベントに来る人は、最初から渋谷の街中でマナー守って楽しんでいる人たちだと思うんですよ。24時からハロウィーンに乗じて騒ぎにくる暴走車は、代々木公園では対策にならないですよね、残念ながら」

 杉山さんは、一つの問題が解決したら、また新たな問題が出ることに頭を抱えていた。

 最後に今後の展望について聞いた。観光協会と同じく、都全体でイベントをすることも考えていた。他にも、スクランブル交差点やハチ公広場の魅力をなくすしかないということも言っていた。しかし、区全体ではハロウィーンに寛大でありたいという意思もあるそうだ。

「区長は全面禁止しよう、全面排除しようという人ではないので、地元も潤い、いい文化になるハロウィーンになって欲しいと言っています。僕らも実感として全く同じです。仮装で楽しんでいる人たち自体は楽しそうです。ウイットの効いた面白い仮装もありますし、地味ハロウィーンも大好きです。仮装を楽しんでいる人たち自体は見ていていいなと思いますが、ハロウィーンに乗じて騒ごうとする輩が多いわけで、そのような人たちをなんとかしなければいけないというのが課題でしょう」

平和な中にも課題は残る

 以上、二人のインタビューからわかるのは、

1.19年のハロウィーン対策は概ね成功だった

2.暴走車が多かった

3.イベント化は難しい

4.来年もハロウィーン対策はする見込み

5.ハロウィーン自体は楽しんでほしい

 ということだ。

 『ジャパニーズハロウィンの謎』で一橋大学松井ゼミ生の山内輔は「渋谷では莫大な数の人が集まり、スクランブル交差点やセンター街はさながら満員電車状態になってしまう。こうした環境下では、誰がやったかわからない状況を招き、責任の所在が不明になる。この結果、個人のモラルが低下し、過激化を招いているといえる」と、渋谷ハロウィーンでの人々の没個性化を述べている*9。群衆の没個性により、罪や恥の意識が薄れてしまうというのだ。18年は軽トラック横転事件が28日に起きてしまったことで、31日に騒ぐ輩が増えてしまったとあった。しかし、山内は「没個性化には、アイデンティティは埋没しつつも、公的な自己意識が高まる状態もある」と海外でのスポーツ観戦でゴミ拾いをする日本サポーターの例も挙げている*10。渋谷の群衆も正しく先導すればマナーを守る可能性があるということだ。19年は飲酒規制条例、約1億円の予算投入で行政が本格的にハロウィーン対策に乗り出した年だ。この本気の姿勢がメディアを通して、渋谷に来る群衆に伝染し、例年と比べ比較的平和なハロウィーンとなったのだろう。

みんなが楽しめる渋ハロに向けて

 19年の渋谷ハロウィーン酒類販売自粛もあり喧嘩する人も少なく、ゴミも減ったことから平和な年になったと言える。しかし、そんな厳しい対応をしてきたにもかかわらず、暴走車のように騒ぐ輩が出てしまった。群衆の没個性化により、騒ぐ者が多ければその心理に乗せられ渋谷はまたカオスと化してしまうだろう。

 しかし、行政主体でマナー啓発や警備活動を行う姿勢だけでも見せれば、「なんでもしていい渋谷」というイメージから、「楽しく安全にハロウィーンが楽しめる渋谷」に変わっていくはずだ。メディアと群衆の心理をうまく活用し、騒ぐ人々を報道するよりゴミ拾いの活動を報道すれば、海外のスポーツ観戦の日本人サポーターのように、名実ともに「誇れる渋谷」になれるだろう。2020年のハロウィーンは2018年の悪夢が蘇らないことを祈るばかりである。

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図8 渋谷駅前のマナー啓発の巨大看板

 

取材・文/髙橋秀輔

*1:「渋谷ハロウィーンノンアル作戦」朝日新聞2019年10月25日付

*2:「軽トラ『ノリで』損壊」読売新聞 2018年12月16日付

*3:一般財団法人渋谷区観光協会SHIBUYA TOURIST FOUNDATION「【MOVIE】SHIBUYA  HALLOWEENYoutube(最終閲覧日2020年1月20日 https://youtu.be/Z0v6OiYAt7Y

*4:一般財団法人渋谷区観光協会「SHIBUYA PRIDE SHIBUYA HALLOWEENハロウィーンの渋谷を誇りに~」(最終閲覧日:2020年1月16日/http://shibuyapridehalloween.tokyo/

*5:商店街振興組合原宿表参道欅会「原宿表参道ハローハロウィーンパンプキンパレード」ホームページ(最終閲覧日:2020年1月17日/http://omotesando.or.jp/halloween/

*6:カワサキハロウィンプロジェクト「KAWASAKI Halloween 2019-カワサキ ハロウィン-」ホームページ(最終閲覧日2020年1月24日/https://kawasakihalloween.com/

*7:池袋ハロウィンコスプレフェス実行委員会「池袋ハロウィンコスプレフェス2019」ホームページ(最終閲覧日2020年1月24日/https://ikebukurocosplay.jp/

*8:弁護士ドットコム「『ハロウィン禁止条例』ネットで待望論 実際にできるのか考えてみた」(最終閲覧日2020年1月26日/https://www.bengo4.com/c_23/n_8824/

*9:松井剛,一橋大学松井ゼミ15期生『ジャパニーズハロウィンの謎 若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?』216ページ(2019年/星海社

*10:松井剛,一橋大学松井ゼミ15期生『ジャパニーズハロウィンの謎 若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?218ページ(2019年/星海社