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武蔵大学 2019年度 後期 メディア社会学方法論ゼミ【松谷創一郎】

白黒つかないプラスチック問題 ~便利な暮らしと不透明になる私たちの未来

 2019年4月、茨城県つくば市でプラスチックゴミ(以下、プラゴミ)の分別回収が始まった。商品のパッケージである「プラスチック製容器包装(以下、プラ容器)」が対象だ。回収日は月に二回。収集されたプラ容器は、日本容器包装リサイクル協会を通して、選定されたリサイクル業者の下で再生される。

 つくば市で分別回収されるプラ容器とは、商品を保護するために使用するプラスチック製の容器や包装を指す。レジ袋やお菓子の外装、卵のパック、化粧品の包装容器など、プラマークのある汚れのないものが対象となる。プラ容器は、商品が消費者の手に渡った時点で不要になる、「使い捨て」の存在だ。人の豊かな暮らしの中、何気なく大量に消費されるプラ容器。些細なプラスチックは、積もりに積もって、地球規模の問題を引き起こしている。

海洋プラスチックと奪われる命

 使い捨てのプラスチックは、その手軽さ故に、ポイ捨ての対象になりやすい。街中でポイ捨てされたペットボトルやレジ袋は、側溝や川を通って、海に流れ着く。海中で分解されにくいプラスチックは、永久的に海を漂う。軽い気持ちで手放されたプラゴミは、今、海で生き物の命を奪っている。

 近年、亡くなった海洋生物の体内に、大量のプラゴミが見つかっている。

 米科学アカデミーの紀要に発表された報告によれば、1962年から2012年の間に論文で言及された海鳥135種のうち、約60%にはプラごみを摂取した形跡があり、うち29%がプラごみの脅威にさらされるとも警告している*1

海の動物たちは、プラゴミを誤って食べてしまう。石油性のプラスチックは、海中はもちろん動物の体内でも、ほとんど分解されない。生き物たちはプラゴミに胃袋を占領され、空腹感を失い、死に至っている*2

 他にも、鼻にストローが詰まってしまったウミガメの写真は、世界中の人々に衝撃を与えた。ウミガメの小さな鼻は、たった一本のストローで塞がる可能性がある。人の便利さの陰で、いくつもの尊い命が消えている。

 また、被害を受けるのは、海洋動物だけではない。海に流れたプラスチックは、私たちの体内にも蓄積しかねない。海流に乗って砕けたプラは、5ミリ以下の小さな欠片(マイクロプラスチック)になり、小さな魚の体内に取り込まれ、さらに、その魚を食糧とする魚の体内に蓄積する。やがて、無数の小さなプラスチックを体内に蓄えた魚は、人の食卓に並ぶ可能性もある。魚介類を媒体に、すでに私たちは、プラスチックを体に取り込んでいるかもしれない。マイクロプラスチックの人体への影響はまだ研究が十分にされていないが、人の体内に分解できない異物が入ると、炎症が起こり、癌の前段階となる可能性が指摘されている*3

 さらに恐ろしいことに、プラスチックは、海に浮かぶ有害物質を吸着しやすい*4 。様々な化学物質が付着したプラが私たちにどのような影響を及ぼすのか、明確には分かっていない。しかし、二枚貝からプラスチック繊維が検出されるなど、その脅威は遠くはなさそうだ*5。人が消費し手放したプラスチックは、有害物質と共に、人の体内から検出されることになるかもしれない。

海洋プラスチックと日本の責任

 2016年のダボス会議で、2050年までに海中のプラスチックが、魚の量を上回ると警告された*6。海洋プラの原因は、ポイ捨てだけではない。その主な放流元は、アジア諸国の海岸と指摘されている*7 。日本の海岸から大量のプラスチックが流れ出ているわけではないが、日本は発展途上国のプラゴミ放流に深く関与している。

 日本は2016年より、発展途上の中国やタイに、資源としてプラゴミを輸出してきた*8アジア諸国は安価に手に入れたプラスチックを、新たな製品に再生することができる。また、石油が原料であるため、エネルギーに変換することもできる。日本政府はあくまで、プラゴミを資源として輸出する立場をとる。

 しかし、日本から輸出されたプラゴミが、すべて資源として使えるわけではない。輸出される物の中には、状態の劣悪なプラスチックも含まれる。再利用するには、泥などの異物が取り除かれた好状態にあるプラスチックが対象になる。リサイクルに不適切なプラゴミは、日本でも外国でもゴミになってしまう。

 先進国の消費者はプラスチック製品を分別してリサイクルに回したつもりでいるが、実際には洗浄やさらなる分別が必要なものも簡単に処理して途上国へ押し付ける例が多い。適正なリサイクルやごみの削減の努力よりも往々にして安上がりだからだ。一方、受け入れた東南アジア諸国でもプラごみは適切にリサイクルされず、たいていは焼却されるか埋め立てられ、そのまま自然環境に放置される場合もある*9

このような発展途上国の現状にもかかわらず、先進国は自国のプラスチックを貧しい国々に輸出し続けてきた。日本やアメリカをはじめとする国々は、資源と称してプラゴミをアジア諸国に輸出。使い捨てプラの消費量の多い国ほど、その処理を海外への輸出に依存してきた。

 そんな国際間のゴミ貿易は、徐々に変わりつつある。2017年より、中国はプラゴミの禁輸措置を始めた。タイやベトナムなどの他アジア諸国にも、プラゴミの輸入規制は広まりつつある。日本は、これまで外国に輸出していたプラゴミを、国内で処理することになる。早急な対策が叫ばれる。

環境省の動き

 環境省は、使い捨てプラの削減やリサイクルにどのような策を講じていくのだろう。環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室の永元雄大さんは「2020年7月に始まるレジ袋の有料化義務化は、その一歩。プラスチックの価値を見直して、必要なら(便利なレジ袋に対して)お金を払うというようにしたい」と話す。プラスチック容器包装の一人あたりの使用量が、世界で二番目に多い日本。レジ袋を筆頭に、使い捨てプラとの付き合い方を問うていく。

 環境省は、プラスチックを大切な資源として、繰り返し使用し続ける、循環型社会を目指す。永元さんは、「サーキュラー・エコノミーを採用する考え。3Rや環境配慮型素材を推進しながら、自然環境に配慮すると共に、経済活動の発展を目標にと、考えています」と話す。

 サーキュラー・エコノミー(Circular Economy)とは、「循環型経済」の意味で、「原材料に依存せず、既存の製品や有休資産の活用などによって価値創造の最大化を図る経済システム*10」のこと。大量生産・大量消費の経済ではなく、今存在するものを、新しく作り変え、循環させることで、資源の消費を抑える社会の在り方を説いている。自然環境と人の経済活動が、共存する社会を実現しようという考えだ。

 環境省は、リデュース(減らす)・リユース(再使用する)・リサイクル(再生利用する)でおなじみの3Rを推進。また、自然由来のエコ素材の普及にも注目している。

 例えば、石油由来のプラの削減のために、使用できる代替プラは二通りある。一つはリサイクルされたプラスチック、もう一つが植物由来のバイオマスプラスチックだ。 

 バイオマスプラスチックは、光合成をして、大気中のCO2を蓄えて育った植物を原料として作られる。そのため、焼却処理されてもCO2の増減に影響がないとされ、環境に良いと注目されている。

 ただし、バイオマスプラスチックはまだまだ高価なため、普及は十分ではない。永元さんは「再生利用(リサイクルプラスチック)の方が価格的にも使いやすい。バイオマスプラスチックと組み合わせて使うなど、少しずつ取り入れられている」と教えてくれた。

企業のリサイクル製品開発

 プラとの関係を問われているのは、小売の現場と個人の間だけではない。循環型社会および新しく資源を消費して生み出すプラスチックの削減には、企業努力が必要不可欠だ。自然を消費せざる負えない経済活動を担う企業は、どのようにプラスチックと向き合うのか。

 企業が力を入れるのは、リサイクルプラスチックの利用だ。昨年12月、東京ビックサイトで開催された「エコプロ2019」にて、帝人グループはペットボトルのリサイクルフローを体験するコーナーを設けていた。

 帝人フロンティア株式会社は、ペットボトルをリサイクルした繊維を展開している。回収されたペットボトルは、細かく砕かれフレーク状(写真1)にされ、熱で溶かされビーズのような状態(写真2)になる。その後は、ヴァージンプラスチック(リサイクルでない、石油などの資源を新しく使って生み出されるプラ)と同様の工程を辿り、溶かされた状態で細長い管から押し出されることで糸状になる。さらに捲縮などの加工をされて、繊維(写真3)となる。ペットボトルが回収された時点で清潔でないと、洗浄する工程が増え、費用はかさむ。しかし、リサイクルの材料はヴァージンプラスチックとほとんど変わらず、繊維に使用できる。純度は少し劣るものの、再生製であるせいで、できない工程はない。繊維を手始めに、様々な製品に、リサイクルプラスチックが利用される未来。そんな期待ができそうだ。

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(写真1)回収されたペットボトルを細かく砕いたもの。フレークと呼ばれる。まだペットボトルの感触が残る。粉砕した切り口がチクチクする。

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(写真2)フレークに熱を加え、溶かして粒状にしたもの。ペレットと呼ばれる。フレークよりも密度が高く、少し重くなる。穴はないが、つるつるのビーズのような感触。

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(写真3)ペレットにさらに熱を加え、細長い管の中を押し出されることで、糸状になる。その後、捲縮(糸を縮れさせる)などの加工を経て、繊維となる。完成した繊維は綿のよう。

 注意して欲しいのは、ペットボトルを再利用して製品を作っても、再利用できないものを作っては、循環にはならないことだ。例えば、エコプロ2019で、帝人グループがアンケート回答者にプレゼントしたウエットティッシュ(写真4)。開け口に「回収したペットボトルからリサイクルされた繊維を使用しています」と書かれているが、リサイクルされたウエットティッシュ自体は使い捨ての存在だ。これでは、資源が循環しているとは言えない。どこまで繰り返し使える製品を生み出せるか、また、そのための体制を作ることができるかが、今後の課題になるだろう。

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(写真4)アンケートに回答して、もらったウェットテッシュ。リサイクル素材で出来ている。市販のものと変わらない厚みがある。

一人一人のリサイクル意識

 プラスチックのリサイクルを進めるには、使った後の一人一人の行動が重要になる。現在、最もリサイクルが進むのはペットボトルだが、これからはさらなる分別が必要になる。代表になるのは、私たちが大量に消費している、プラスチック容器包装だ。

 つくば市で分別回収されたプラ容器は、選定されたリサイクル業者で再生される。現在回収されたプラ容器は、ガス化された後、炭素と水素に分離され、再利用されている。炭素はドライアイスや液化炭素ガスとして出荷され、水素は窒素と混ぜてアンモニアを製造し、洋服やプラスチック製品の原料や薬剤に使われる*11

 回収対象のプラスチックは、プラマークのついた、商品の容器包装に使われた清潔なプラスチックに限られる。汚れが落ちないものを省いても、プラ容器に分別できるゴミは想像より多い。2019年5月、つくば市の燃やせるゴミの回収量は一人当たり582.5グラム。その内、資源化可能なプラスチック(プラ容器)は5.7パーセントを占める約33グラム含まれていた *12。分別の呼びかけがまだまだ必要だ。つくば市生活環境部環境衛生課の山田耕太さんは、「現在のプラ容器の分別収集量は、一人当たり約5グラム。今、燃えるゴミとして出されている資源化可能なプラスチックの半分が分別されれば、(プラ容器分別回収量の)全国平均の19グラムを超えることができる」と話してくれた。

 さらに、燃えるゴミの中には、資源化可能な紙類も多く含まれているそうだ。ボックスティッシュの空き箱や、お菓子の空き箱、特殊加工のされていないチラシ類など、紙類に分別できるゴミも幅広い。それらの「雑がみ」は、分別回収して、リサイクル業者に売ることができる。ゴミを減らすことで、市の収益にも繋がる。リサイクルも多様化し、一石二鳥なのだ。  

 現在、プラ容器は、対象のプラスチックの幅が非常に広い。ビニール状の薄く軽いものから、化粧品のケースのような厚く重さのあるものまで、一括りになる。現在最もリサイクルしやすいプラスチックはペットボトルだが、それは一定の品質のプラスチックを集めることができるからだ。プラ容器は、対象品の種類が多く、純度にバラつきがあるため、回収できるプラスチックの品質がペットボトルよりも不安定だ。今後、プラスチックの分別数が増えれば、より循環の多様性があるリサイクルの道が開けるかもしれない。

 分別回収とリサイクルの確立よって、もう一つ解決に向かう問題がある。それは、ゴミの焼却灰の埋立地の不足の問題だ。つくば市はプラ容器の分別回収の目的の一つに、埋立地の延命化を上げている。現在埋め立てられている下妻市の最終処分場は、今のペースで行けば約5年で埋め尽くされてしまう。

 リサイクルの拡大によって、ゴミの減量が進めば、焼却の際に排出される二酸化炭素も削減できる。様々な角度から、持続可能な社会に近づくに違いない。

 世界中で起こるプラスチック問題に対する国内の動きを紹介してきた。私たちが大量に使い捨てるプラスチックは、海に流れ、海を汚し、動物たちを殺めている。日本はこれまで発展途上国にプラスチックゴミを輸出し、問題の深刻化を招いた当事者と言えよう。使い捨てプラスチック消費量世界二位の日本は、これからは循環型社会の概念の元、プラスチックの循環体制の見直しや意識改革を推し進めようとしている。

 しかし、プラスチックを循環的に使用することで、どの程度、地球の未来を延命化できるのだろうか。状況の改善に向けて、積極的な動きの一方、プラスチックの需要は増加している。例えば、2019年10月より適用が開始した「軽減税率」。お店で飲食していた食べ物を、10%の消費税を避けて、プラスチック容器に入れて持ち帰る機会は増えていないか。また、タピオカなどテイクアウトドリンクの流行・普及も、記憶に新しい。飲み物を入れる容器もストローも、ほとんどが使い捨てプラスチックだ。

 進めるべきは、循環化だけでは不十分だ。使用の削減を念頭に、人の意識改革が必要だろう。私たちの生活の豊かさの象徴である、プラスチック。人がプラスチックを完全に断つことは難しい。しかし、私たちは今、人が招いた環境問題と向き合わねばならない。無駄遣いを減らし、使ったプラスチックを大切にリサイクルする、そんな一人一人の行動が守る環境があると気づかねばならない。今年7月から始まるレジ袋の有料化で、私たちは便利なプラスチックバックの価値を見直すことができるかもしれない。環境省の永元さんは「プラスチックとの賢い付き合い方を、見直していきたい」と呼びかけていた。

 

取材・文/大山詩織

*1:アリストス・ジャージョウ「人間の未来を蝕むプラスチック危機(A Fatal Sea Of Plastic)」ニューズウィーク日本版2019年11月26日発行、18-23頁。

*2: 同上、18、19頁。

*3: 同上、21頁。

*4:同上、20頁。

*5:同上、21頁。

*6: World Economic Forum, The New Plastics Economy:Rethinking the future of plastics, January2016.

*7:環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況〈参考資料集〉」30頁。

*8:同上、65頁。

*9:マゲシュワリ・サンガラリンガム、サム・コッサー「先進諸国のごみを拒否する東南アジア(No Longer Tolerable)」ニューズウィーク日本版2019年11月26日発行、27頁。

*10:CSRコミュニケート「サーキュラー・エコノミー(Circular Economy)とは何ですか?」(最終閲覧日:2020年2月5日)https://www.csr-communicate.com/qa/20160422/csr-30176

*11:『広報つくば』2019年9月1日5面「集められたプラスチック容器包装はどうなっていくの?」。

*12:『広報つくば』2019年9月1日5面「燃やせるごみを減らすために」。

喫茶店業界の現状 個人経営の喫茶店の苦境

  2019年10月、消費税が10%に引き上げられ、軽減税率が導入された。初の2桁台の消費税は様々な業界に大きな影響を与えたが、その中でも喫茶店業界への影響は大きいものだった。東京商工リサーチの2019年1〜8月の喫茶店倒産状況では8月の時点で42件であり、前年同期比35.4%増とかなり大きい。特に個人経営の喫茶店の倒産数が多く、このまま行くと2011年の70件に達するのではないかと懸念されている*1

  

 2011年は2000年以降で最も倒産数が多かった年である。主な原因として東日本大震災後の消費マインドの悪化が原因だと思われる*2

 そして2019年は、この年の倒産数に迫る勢いだという。主な原因としてコンビニのコーヒーメーカの普及やタピオカドリンクの流行等があげられる。またこの東京商工リサーチのデータは、消費税が導入される前のものである。そうなると10月以降に倒産数が加速する可能性が高い。

 「居抜き情報.COM」によると、飲食店は開業して二年で半分近く潰れる*3それでも初の2ケタ台の消費税導入や軽減税率導入によるレジ倒産(レジを購入する資本の不足で倒産してしまうこと)などの問題もあり、喫茶店は今岐路に立たされていると言える。

 また、ここで留意しておきたいのは、コーヒー自体の需要は増えているということである。全日本コーヒー協会によると、コーヒー消費量は2011年の420トンから右肩上がりで2018年には470トンになっている。また1週間あたりに一人が飲む杯数も増加傾向にある。これはつまり、コーヒーを飲む場所が変わっているのではないか

*4

 

 

【飲む場所の変化の例】

 飲む場所が変わった例の一つが、コンビニコーヒーである。

元々セブンイレブンは、1980年代からコンビニコーヒーの導入を検討していたが失敗続きであった。しかし2013年に導入されたセブンカフェは、かつての失敗の経験、ビックデータの活用もあり大きく普及した。わずか20秒程度で提供されるコーヒーは、通勤前のサラリーマン等に大きな需要があった。

コンビニコーヒーは個人経営の喫茶店だけでなく、大手コーヒーチェーン店にも大きな影響を与えている。またその大手チェーン店も個人経営の喫茶店を圧迫している。

 有名コーヒーチェーンの店舗数は、ホームページを見るとスターバックスが1497店舗(2019年9月30日時点)、ドトールコーヒーが1106店舗(2019年11月末時点)、コメダ珈琲が849店舗(2019年8月末時点)*5と、全国的に多数の店舗を展開している。スターバックスCEOのケビン・ジョンソンは2018年に、2021年末までに1700店舗出店を目指していると公言している *6 。コーヒーチェーンの中でも圧倒的な勢いを持つスターバックスは、どのような経営戦略をとっているのか。

 

スターバックスの経営戦略】

 スターバックスはコーヒーの質を重要視しており、全体的に値段も他の珈琲チェーン店より若干上になっている。

 例えばドトールと比較してみると、一番安いアイスコーヒーやブレンドコーヒーがSサイズ220円(テイクアウト)なのに対し、スターバックスはドリップコーヒーがshortサイズ319円と一番安く、100円の差がある。

 これにはスターバックス元最高責任者のハワード・シュルツの「第三の場所(サードプレイス)」という企業意識に紐付られる。「第三の場所」とはアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが著書「the great good place」で論じた言葉で、自宅や職場とは違う第三の居場所のことである*7。「第三の場所」という居心地の良い環境を提供することで、商品の価格が少し高くても顧客を集めることができるのだ。

 実際スターバックスの内装は工夫に工夫を重ねられ、緑色のロゴや木製のインテリア、暖色の照明等目に見える範囲でも落ち着くように設計されている。こうして見ると、スターバックスは雰囲気を提供する点においては、個人経営での喫茶店に近いスタンスを取っている。

 また経営として、広告をほとんど出さない特徴がある。なぜなら出店することが最大の広告となるからだ。駅ナカや複合施設、駅周辺の中心街等に店を構えることによって、開店の知らせが多くの人に素早く伝わるのだ。実際鳥取県に初店舗を出したとき時は、多くのメディアに取り上げられた。

 

【他のチェーンはどのように生き残っているのか】

 しかし顧客満足度の推移を見てみると、2018年はスターバックスはカフェベローチェドトールコーヒーに負けている *8ドトールはどのようにして今の地位を獲得してきたのだろうか。

 人気の要因の一つは簡素な外観である。スターバックスのようなおしゃれな店に入りづらい人には助かるだろう。確かに私もスターバックスのようなお洒落なイメージのある所より、ドトールのような素朴な造りの方が入りやすく感じる。

 値段も手頃なものが多く、人気メニューの「ジャーマンドック」は220円と驚きの安さだ。ドトールのキャッチコピーである「がんばる人の、がんばらない時間」は、新たに踏み出すパワーを充電するために必要だという考えがある*9。徹底した居心地の良い空間づくりが今の地位に繋がっている。

  次にコメダ珈琲について言及したい。もともとは1968年に開店した個人経営の店だったが、1975年には法人登録された。今年で創業51年で、デニッシュパンの上にアイスをのせた「シロノワール」は人気のメニューである。

 その特徴は、地元に根付いた現場主義である。また客の滞在時間も長い。暗めのアンティーク調の外観や長いソファ、スターバックスドトールとは違い店員が注文を聞きに来て店員が品を運んでくるフルサービスシステムが、平均滞在時間を長くしているのだ。これは居心地がよいとも捉えられるが、回転率が悪いことも意味している。

 しかしコメダ珈琲は日本のコーヒーチェーン店の中でも、トップレベルの売上を出している。何故なら全時間帯にまんべんなく客を入れる戦略を取っているからだ。他のコーヒーチェーン店は、あえて木製の固い椅子にすることによって一人一人の平均滞在時間を短くしている。そうすることで回転率が上がる。しかしコメダ珈琲は柔らかいソファにし、また新聞や雑誌を置くことによって居心地のよい場所を提供している。そうすることで様々な年齢層や立場の人が利用し、結果として全時間帯で多くの客が来店しているのだ*10

 

【個人経営の喫茶店の戦略は?】

 このようなコーヒーチェーンは年々店舗数を増やし、その圧倒的な合理性によって個人経営の喫茶店は少しずつだが淘汰されていく運命にある。では、個人経営の喫茶店はどのように考えどのような戦略を考えているのか。

 今回、東京都練馬区にある「トレボン」に伺い話を聞かせてもらった。トレボンは今年で38年目でマスターの塚本英男さんがひとりで経営している。

 最初に私が驚いたのは、レジが無かったことだ。「レジ倒産」について質問しようと思ったのでレジを使用していないことは想定外だった。

個人経営といっても様々な喫茶店があるが、1人で経営できるような小さめの店舗ではレジは必要ないのだ。実際この次に行った喫茶店モカ」にも、レジは無かった。塚本さんはこだわりの強い方で電化製品を周りに置きたくないそうだ。店内にも旧式の置き電話以外の電化製品は見当たらなかった。

 最初に消費税増税の影響を聞くと、驚いたことに消費税が導入された1989年以前から一切値段を上げていないそうだ。実際、経営状況は近年の使用している豆の高騰も相まって厳しいものだという。

 次に、そうした中でのトレボンの強みは何かと聞いてみた。塚本さん曰くコーヒーの徹底したクオリティの追求が顧客獲得に繋がっているという。トレボンは最高級のグレードの豆を使用している。倉庫に豆を置いておくことは殆どなく、使い切るように注文し新鮮な豆でコーヒーを淹れられるように心がけている。また創業38年という長い年月で試行錯誤された珈琲の入れ方は究極とも言え、塚本さん自身がコーヒーオタクのため今でも試行錯誤を繰り返しているという。

「豆は本当に気まぐれで、少し手順を変えただけで味が違うんです。毎日研究しないと味が落ちちゃいます」

 私はコーヒーに詳しくないし味の違いが分かるわけでもないが、それでも塚本さんのコーヒーは今まで飲んだものでは一番だった。しかし最高級の豆を使っている分、豆の価格変動には大きく影響を受けるそうだ。

 次にこれから喫茶店業界がどうなると思うか聞いてみた。今の時代は、豆の質が重要視されている第三ウェーブ期だという。またこれから第二次ベビーブーム世代が退職し、地元に帰省したりすることを考えると、個人経営の喫茶店が盛り返す時代が来る可能性は大いにあるという。

「私は何事も質の高いモノに接することが、心の質を上げると考えています。なので、お客様には良いコーヒーを飲んで人生を豊かにして欲しい」

 マスターは最後に言った。

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江古田駅近くのトレボン。日本大学芸術学部キャンパスのそばにある 撮影:秦 理人)

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(店内にある本物のコントラバス 撮影:秦 理人)

 

モカのマスターが語る個人経営の喫茶店の長所】

  次に江古田の「モカ」という店に行った。女性のマスター・藤野ミチコさんが1人で経営している。メニューは驚くほど安く、そこにはお金をあまり持っていない学生に来て欲しいという思いがある。

「意外と若い人は多いですよ。学校で起きたことや親や友達に相談しにくいことを話に来るんです。そういう人たちにお金をあまり気にしてほしくない」

 先程述べたコンビニコーヒーやコーヒーチェーン店についてどう思っているのか、聞いてみた。

「時代の流れの中で淘汰されていくものがあることは当然のことで、今は合理性が求められている時代であるため仕方がない。しかし、このような地元に根づいた喫茶店はかなり需要がある」

 このように個人経営の喫茶店における強みは、地元の人との付き合いやコーヒーの質の追求にある。それはコーヒーチェーン店では出すのが難しい利点だ。しかし資本主義社会において、個人経営の喫茶店よりコンビニコーヒーやコーヒーチェーン店のような商業性の高いシステムが競争に勝っていくのも事実である。合理性が求められているこの時代に生き残るのは難しい。

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(武蔵の音楽大学の近くにある。レトロな外観が江古田の街並みにとけこんでいる 撮影:秦 理人)

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(メニューは安く学生にはありがたい 撮影:秦 理人)

 

【喫茶店業界の現状】

    今回の取材で感じたのは個人経営の喫茶店が淘汰されていくのは不可抗力の部分もあるということだ。

 もちろん個人での経営努力は大切だ。最近では埼玉を中心に展開している「おふろcafe」や池袋の「探偵カフェ」など体験型の喫茶店や、トレボンやモカのような純喫茶が注目を集めている。多くの喫茶店が差別化を図ろうと経営努力に励んでいる。

しかし時代の流れは効率化だ。通販で家にいれば買いたい商品が届くし、本はタブレットでいつでも読める。果たしてそれが最善なのだろうか。トレボンのマスターの「質の高いものに触れることが、心の質を高めることに繋がる」という言葉が、効率化の進む時代で人々が忘れつつあることの本質に思える。

 私たちは効率化する時代の中で、素晴らしい喫茶店が淘汰されていく喫茶店業界の現実を受け止めなくてはならない。

 

取材・文/秦理人

*1:東京商工リサーチ「(1‐8月)『喫茶店』の倒産状況」2020年1月24日 確認https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190913_01.html

*2:経済産業省「産業活動分析(平成23年4月~6月期)」 2020年1月24日確認https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h23/h4a1109j2.pd

*3:居抜き情報.COM「閉店しやすい飲食店の特徴は!?居抜き情報.COMが過去に閉店した飲食店の傾向の調査結果を発表![2014-2016年版]」  2019年1月24日確認https://www.inuki-info.com/reports/detail/9204

*4:全日本コーヒー協会「統計資料 『日本のコーヒーの消費と株価』2020年1月24日確認http://coffee.ajca.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/data00c_2019_04.pdf 

 全日本コーヒー協会「統計資料 『日本のコーヒーの飲用情報』」2020年1月26日確認http://www.katocoffee.com/agca/data/data04.html

*5:スターバックスコーヒージャパン「会社概用」https://www.starbucks.co.jp/company/summary/  2020年1月24日確認

 ドトールドトールグループ総店舗数」https://www.doutor.co.jp/about_us/ir/report/fcinfo.html  2020年1月24日確認

コメダ珈琲店「会社案内」www.komeda.co.jp/company/aboutus.html  2020年1月24日確認

*6: 日本経済新聞「スターバックス、日本での戦略的取り組みを発表-2021年末1700店舗/UberEats導入/LINEと提携など」2018年11月8日付 https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP101C1000000/ 

*7:片岡亜紀子、石山恒貴「地域コミュニティにおけるサードプレイスの役割と効果」   2017年、出版:法政大学地域研究センター   掲載雑誌『地域イノベーション』     p74 

*8:公共財団法人日本生産性本部「2018年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査結果発表~帝国ホテルが10年連続顧客満足1位」 2020年1月24日確認https://activity.jpc-net.jp/detail/srv/activity001537.html 

*9:ドトール「News Release」https://www.doutor.co.jp/ir/jp/news/pdf/D0325_brand.pdf 2020年1月24日確認

*10:高井尚之「コメダ『滞在時間が長い』のに儲かる理由」『PRESIDENT Online』2017年1月6日https://president.jp/articles/-/20810

フィルムカメラの再ブーム 〜なぜ不便なものを使っているのか〜

    フィルムカメラの再ブーム]

 近ごろ様々なところでフィルムカメラに関するものや写真をよく目にする。SNSではフィルムカメラで撮影した写真が多く投稿されている。「#写ルンです」や、「#フィルムカメラ」、「#フィルムカメラに恋してる」や、「#filmphotography」など、フィルムカメラに関するハッシュタグが多く存在している。Instagramの投稿数からしても、「#写ルンです」は78.1万件、「#フィルムカメラ」は218万件、「#filmphotography」は約2000万件と、沢山投稿されている(2020年1月現在)。

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【#写ルンです での検索結果(2020年1月)】

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【#filmphotography の検索結果(2020年1月)】

 またファッション雑誌の写真やアーティストのミュージックビデオでも、鮮明な写真や映像ではなく少し荒くフィルムっぽくなっているものもよく目にする。生活雑貨を扱うお店では使い捨てフィルムカメラ写ルンですのブースが設置してあったりと、生活の中でも目にすることが明らかに多くなったと感じる。

 普段私たちは日常生活の中で写真を撮りたいときには、スマートフォンで撮る。よりしっかりと撮りたいときには、画質の良いデジタルカメラや一眼レフで撮る。にも関わらず、なぜフィルムカメラが再ブームしているのだろうか。

フィルムカメラの魅力]

 Instagramを利用している中で、よくフィルムっぽい写真を目にするので、フィルムカメラの写真をInstagramにあげている友人に写ルンですをいつから始めたかを聞くと、以下のような答えが返ってきた。

Aさん(大学生・女性) 去年から、友達の影響

Bさん(大学生・女性) 去年の夏(7月の終わりくらい)大学の友人

Cさん(大学生・女性) 3~4年前、奥山由之の写真展に行って興味がわいた

Dさん(大学生・女性) 去年の6月8日、時代の流れ的に

Eさん(大学生・男性) 2年半前

 また、その中でも写ルンですとはべつのフィルムカメラを使用している友人に、いつ頃から誰の影響で始めたのかを聞くと、

Bさん(大学生・女性) 去年の夏(8月の真ん中くらい)

Cさん(大学生・女性) 2年前の7月、友達や先輩が持っている人が多かった

Dさん(大学生・女性) 去年の7月19日、友達の影響

Fさん(大学生・男性) 5年前 いとこ

という回答になった。

 この回答からも分かるように、ここ1年〜2年でフィルムカメラを使い始めた人が大半である。そして写ルンですを使い始めてから、フィルムカメラに手を出す人が多いことが質問から読み取れる。

 私自身も中学生の頃に写ルンですを初めて使い、高校生の頃に写ルンですにハマった。私の使い始めたきっかけは、中学校では携帯電話を回収されていたので、課外授業のときにデジタルカメラ写ルンですを持っていき、写真の色合いやどんな写真が完成するかというワクワク感を味わい、文化祭などイベントで持っていくようになった。

 そこで、なぜフィルムカメラを使っているかを聞くと以下のような回答だった。

Aさん(大学生・女性) スマホで撮るよりも写真の質感がいいから

Bさん(大学生・女性) 大事な思い出を残したいから

Cさん(大学生・女性) 写真としての価値がより高まるから

Dさん(大学生・女性) 現像するまでのどきどき

Eさん(大学生・女性) 90年代(又はインスタントカメラが大衆で主に使われていた時代)の再現をするため、90年代の人と同じ環境で同じことをするため

Fさん(大学生・男性) 写真を撮ってネガに焼き付けて現像する行為が好きだから

 現在、スマートフォンで写真を撮ることが当たり前になり、また昔よりも画質が良くなっていることから、逆にレトロ感のあるようなフィルムの写真にハマっていく人が増えているのではないかと感じた。スマホと違い、24枚や36枚、撮り終えるまでどんな写真になっているか分からないことも本来なら不便に感じるだろう。

 実際に使用していた親に聞くと、現像したときに半目だったりブレていたりしていることが多いし、わざわざ現像しに行かなければならなかったから不便だったと言っていた。今ハマっている人たちは、逆にそこに魅力を感じているのだ。わざわざ写ルンです、または、フィルムを買って撮り終えるまでどんな写真だか分からず、撮り終わったら現像しに行く。そのワクワク感の虜になる。

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【ブレた写真】(2020年1月撮影)

 もともとフィルムカメラは、写真を残す方法がこれしかなかったから使っていたはずだ。今で言う私たちがスマホで写真を撮るように、写ルンですフィルムカメラで撮っていたのだろう。スマホと違うところは枚数に制限があるところだ。

 

 スマホだと写真を何枚でも撮りまくれ、連写もできる、そのような撮り方をしている私たちにとっては、枚数に限りがあるフィルムカメラを使うことは一枚一枚が貴重な写真になる。そして画面をタッチすればピントを合わせてくれ、フラッシュも光りすぎることは滅多にないようなスマホに比べ、使い捨てフィルムカメラではピントを合わせることもズームをすることもできない。自分で撮りたいものに近づかなければならないのだ。フラッシュも光が強すぎて顔が白くなりすぎてしまったりする。だが、それさえも懐かしみのある写真だと感じる。

 フィルムカメラでなぜ撮っているかを質問したなかに「写真をとってネガに焼き付きて現像する行為がすきだから」という意見もあった。現像した写真自体にも良さを感じ、またフィルムカメラをいじって撮るという行為にも魅力を感じているのではないか。

 フィルムカメラを接してこなかった私たちの世代からすれば、古いものであってもそれは逆に新しいものという感覚になる。

[なぜこんなに流行ってるのか]

 ブームなっていることは売り上げからも伝わってくる。

 新宿にある中古カメラ屋・BOXでも、代表の田中振男さんは「ここ1年で確実にコンパクトフィルムカメラを買っていくお客さんが増えた」と言う。また驚いたことにここ1、2年は、観光客からも人気だそうだ。ヨーロッパの方もたまに買いに来られるが、特に中国人や台湾人の方が買いに来られることが多く、その中でも女性が買うことが多いという。それは日本人も観光客も含めての話だ。

 実際に私が去年の夏休みにBOXを訪れたときには、中国人の観光客がコンパクトフィルムカメラのブースを囲っていた。また取材させていただいた日にも、オーストラリア人の女性がコンパクトフィルムカメラを買っていた。

 このことから日本の若い世代の人たちだけではなく、世界的に流行っているのではないかという考えが浮かぶ。実際、前に述べたようにInstagramハッシュタグ、「#filmphotography」には約2000万件の投稿があるわけで、そこから投稿へ飛ぶと多くの外国人がフィルムカメラで撮った写真を載せている。

 なぜこんなにも流行っているのか。

 一つの理由として、常連の方は「お手頃な値段で買えるというのもあると思う」という。たしかに一眼レフカメラなどに比べて、使い捨てフィルムカメラは1500円前後、安いコンパクトフィルムカメラは中古で5000円ほどで買える。そのような点ではお手頃で買いやすい。

 それに加え、コンパクトフィルムカメラは簡単に撮ることができるのも流行る理由の一つだと考えた。オートモードの場合、ボタン一つで撮ることができる。あとはフラッシュを焚く場合、ボタンを操作するだけだ。そしてスマホデジタルカメラのようにすぐに撮った写真をみたり、削除したりすることができない。現像してから「構図がうまくできた」や「光すぎて失敗したな」と気づくのである。

 中古カメラBOXでも「スマホが一通り出回ってもう飽きたから、だからフィルムに移行したのではないか」と言っていた。スマホで簡単に写真を撮ることに慣れた人たちにとって、カメラの知識がなくても撮れるコンパクトフィルムカメラは趣味になりやすいのではないか。

 若い人たちの中で流行っているなか、このブームは続くかという質問をすると、「続けたいけど商品がない。あっても高くなる」と話していた。昔は3000円くらいの値段の商品が沢山あり、買う人も少なかったけれど、最近は人気でどんどんコンパクトフィルムカメラの在庫が減ってきているそうだ。在庫が減ってしまえばそれだけの価値がつき、値段が高くなってしまう。いつなくなるかも分からない。

 またコンパクトフィルムカメラでカメラの面白さを知り、レンズを替えらるものが流行るのではないかという話も出た。「オールドレンズを使うことで臨場感のある写真が撮れる」とおっしゃっていたが、確かに私もここで様々なカメラや、フィルムカメラで撮った写真を見せてもらい、奥が深くカメラのことをもっと知りたいと思った。またスマホのアプリでフィルターをかけて撮るのと同じように、それを道具を使ったりして行っているのだ。レンズの前にザルや手の隙間、ストッキングなどを使ってフィルターをかけていた。タッチするだけで加工できてしまうものとは違って、あるものでフィルターをかけていく。またフィルターによっては光ボケを星形に輝かせたりと様々なものがあることを知った。

スマホフィルムカメラ

 なぜ不便なフィルムカメラを使っているのかに関しては、やはりスマホで撮るということに対して慣れた若者たちだからこそ流行っているのではないか。何枚でも撮りまくれるスマホと違って、枚数に限りがあるフィルムカメラは面白い。ブレたり光りすぎてしまった失敗した写真も、それがまた味のある写真のように思える。

 そして、それをシェアする場がある。Instagramのように撮ったものをすぐに皆に見せることができるのは、ブームを助長させた一つだ。現像してくれるお店に行くと、プリントではなくスマホに画像を転送してくれるシステムもある。BOXの代表は「プリントをして色褪せていくのもいい」と言っていたが、若い世代ではあまりプリントをする人はいない。

 フィルムカメラを使っている方たちに現像はプリントしていますか?スマホ転送だけですか?という質問をすると

Aさん(大学生・女性) 基本はスマホ転送、たまにプリントもしてる

Bさん(大学生・女性) スマホ転送のみ

Cさん(大学生・女性) プリントしないことが多い、DVDに焼いている

Dさん(大学生・女性) スマホ転送のみ

Eさん(大学生・女性) スマホ転送して良いショットだけプリントする

Fさん(大学生・男性) スマホ転送

 という答えだった。

 やはりプリントではなく、スマホ転送が主流になっていた。今の時代に沿ったサービスをしてくれていることも流行った要因の一つだ。

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【ファインダーの覗き穴をスマホで撮った写真】(2019年2月撮影)


[ブームの行方]

 フィルムカメラを使用している人への質問で、ここ1年~2年でフィルムカメラを使い始めた人が多いことが分かった。また使い捨てフィルムカメラ写ルンですでその魅力に気づき、コンパクトフィルムカメラを買う人も多かった。近頃人気ということは中古カメラ屋・BOXへの取材からも分かり、代表の方はここ一年で確実にコンパクトフィルムカメラを買う人が増えたと言っていた。また観光客もよく買いに来るということから、日本だけでなく世界的にブームになっているのではないかと考える。

 そして今、スマホで撮るということに慣れ、フィルムカメラを触ったことのない世代が、逆に新しいものといった感覚で使用しているのだ。つまり、まだ触れたことのない世代の中で流行る可能性もあるということだ。ただ、このブームは続いていくのかもしれないが、コンパクトフィルムカメラの在庫に限りがあるから難しい問題でもある。

 何がまたリバイバルブームを起こすか分からない。今私たちが触れているものが、いつか古いものとしてその時代の流れとマッチして流行るかもしれない。

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取材・文/遊佐瑞季

テスト

はじめまして。

 

これから、様々な記事を掲載します。

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投稿時間は2020年1月22日0時00分です。

 

 

 

 

*1:はてなブログは初めて使用します